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持ちよりライブラリ: 本・まんが 著者名「た〜の」□ ジャレド・ダイアモンド/銃・病原菌・鉄■管理人の感想ヨーロッパ人がオーストラリアを初めて訪れたとき、先住民は金属器すら知らなかった。インカ帝国はあっという間にスペインに侵略された。なぜこのようにユーラシア大陸とそのほかの大陸では文明の発展に差ができたのかという疑問に対しての回答を、「人種的な能力の差」ではなく、人類学、生物地理学、言語学などの様々な分野を駆使して論じた本です。 テーマ自体が個人的にはものすごく興味深い上に、読みやすい文章、脱線しない程度の様々な興味深いエピソードの紹介、全編にあふれるささやかなユーモアはさらにこの本を魅力的にしています。もうはまりまくりました。電車の中で読んでいるうちに止まらなくなり、駅に降りてから自宅までの10分の道のりすら我慢できず駅のベンチでそのまま最後まで読み切ってしまったくらいです。 以前から、なんでこんなに国の発展具合が違うのかは大きな疑問だったんです。歴史に関する興味はすべてそこに行き着くといっていいくらい。ヨーロッパ人はアボリジニより優秀なのかなあ・・・とも感じつつも、割り切れない思いはずっとありました。 その割り切れなさに対して、「発展に差ができたのは、究極的には地理的な要因、つまりその地域に栽培可能な植物や家畜化可能な動物が多いか、そしてそれらを栽培・家畜化し続けることができる環境かどうかで決まる」と述べるこの本は新鮮で非常に興味深かったです。 こう書くと、当然「そんな単純なものじゃないだろう」と思われるでしょう。もちろん、今のような格差のある世界になった道のりは単純ではありません。しかし、それを驚くほど幅広い分野の研究から分析し、結果的に充分納得できる(と私個人は感じました)内容にしていくその過程には魅せられ続けました。 こんなに面白い本が、結局「人種ではなく環境」という結論を導き出しているということから、私は逆に、「環境」がどれほど恐ろしいものかを痛感させられたともいえます。 あと何回、こんな面白くて物の見方を激変させる本に出会えるのかな。 注:なお、この作品の原書には参考文献一覧があり、秀逸な読書ガイドにもなっているのですが、邦訳時にはなぜかカットされています。出版社である草思社は後にこれをサイトに掲載していましたが、最近はアクセスできないようです。一方で、山形浩生氏が自身のサイトで「翻訳権・著作権侵害にあたります」と断った上で有志と訳を完成。その成果は今も読めます。 ◇ 武部好伸/北アイルランド ケルト紀行〜アルスターを歩く■ご紹介下さった方NTさん ■紹介メッセージ
「日本でも多くのアイルランド本は発売されていますが、南(アイルランド共和国)の話が圧倒的に多いし、北の話と言えば、IRAネタくらい。 ■管理人の感想いい意味で、素人の旅行記の雰囲気を味わうことができました。自分の足で歩き、自分の目で見たことを素直に文章にしている。そんな印象を持ったのです。だから、個人的にはテロのイメージが濃い北アイルランドにも親しみがもてました。時々入る著者の奥さんの一言もいい感じですね。 タイトルには「ケルト紀行」とありますが、現在のアイルランド問題にもきちんと言及しており、むしろそちらの方が興味深く読めました。この地に訪れる前には是非読んでおきたい本です。単なる観光ガイドブックとしてではなく。(2002年1月) ◇ 筒井康隆/夢の木坂分岐点■ご紹介下さった方UKIさん ■管理人の感想物語が進んでいくうちに、登場人物の名前、設定、世界などが微妙に変化していく非常に奇妙かつ実験的、しかしエンターテインメントともいえる作品。こんな小説よく書いたよなあ(驚)というのが最初の印象です。本当に夢を見ているときのような「今感じている出来事が現実とは違うと自覚しているが否定せず無抵抗に受け入れる」感覚が頭の中を漂いました。(1998年5月15日) □ 手塚治虫/ブラック・ジャック■管理人の感想天才だが無免許で法外な治療費を要求する外科医ブラック・ジャックが世界各地でオペをふるう・・・という物語説明はこの作品には不要かもしれませんね。アニメ化も果たされ、完全に手塚治虫の代表作のひとつになった感のある作品ですが、連載開始当時は手塚治虫の人気がどん底だった頃で、担当編集者は上司から「手塚さんに引導を渡してこい」と言われていたそうです。 それはともかく、この作品を1週間に1作描いていた手塚治虫は、やはり「神様」だったのかもしれません。短編まんがの(いや、短編小説の)お手本のような物語があふれているこの作品を読むと、もし手塚治虫が英語圏の人だったら、この作品1作だけでも、Oヘンリ以上の評価が得られて、世界中に「まんが」がもっともっとあふれていたのでは、なんて思います。 そんなふうに忘れられない物語が満載ですが、奥深さでひとつ思い出されるのは「刻印」です。 ブラック・ジャックの幼なじみ間久部は「暗黒街のプリンス」と言われるような犯罪者になっていた。彼はブラック・ジャックに指紋を変えてもらうよう頼み、手術は無事成功する。しかしブラック・ジャックが帰るとき、かばんが爆発し重傷を負う。その後、間久部は指紋が違うため警察の追求を逃れていたが、ブラック・ジャックからのメッセージで事態は急変する・・・ そんな物語なのですが、これ、最後まで間久部とブラック・ジャックが心の底で思っていたことがわからないようになっています。もともと連載時は違う話だったものを手塚が単行本収録時に書き直しこうなったようですが、十数ページの中でこんな奥深さを見せてくれるまんがはなかなかありません。「ブラック・ジャック」の中では異色作ですが、手塚の才能の一端を見せてくれる回ではあると思います。 他にも、彼の才能の端々をそれぞれの物語が見せてくれる作品です。手塚キャラクターが数多く出演しているだけでなく、こういう点でもまさに手塚治虫の代表作というにふさわしい作品と言えるのかもしれませんね。 ◇ 戸井十月/カストロ、銅像なき権力者■ご紹介下さった方みちこさん(職場の同僚) ■管理人の感想
[内容] 冒頭は、キューバ系アメリカ財団へのインタビュー。カストロ政権がどれほど過酷で、どれだけ多くのキューバ人がアメリカに亡命しているかが説明されます。しかし著者は、以前訪ねたキューバで見た人々の笑顔が忘れられません。自分の目でキューバを確かめ、カストロに会いたい一心で彼はキューバに飛びます。
[感想] そのようにこの本を読んでもっとも感じたことは、一口に独裁国家と言っても様々な形態があり得るのだということです。 カストロは自分の偶像をキューバ国内に建てることを法律で禁じています。他の独裁国家では聞いたことのないこの制度。一方で、彼は休憩なしで7時間の演説を行うなど、自己顕示欲はやはり並大抵ではないようです。そしてキューバがいかに素晴らしい国であるかに熱弁をふるいます。こんなところは他の独裁国家でもよく聞く話です。 結局彼は、制限のある環境下でキューバをいかに暮らしやすい国にするかということを世界に示すことでその底知れぬ自己顕示欲を満たしているのではないか、そのように感じました。きっとそれは、独裁者が自己を神格化し恐怖政治を行うのと根っこではそんなに違わないのでしょう。しかし結果は残酷なほど違う。 政治というものの力と、カストロという男の魅力、そしてキューバについて考えさせてくれる本でした。(2004年11月) ◇ 永井豪/デビルマン(完全復刻版)■ご紹介下さった方JOSHさん ■紹介メッセージ「私の人生観を決定づけた作品です。」 ■管理人の感想(ネタバレありです。結末まではばらしていませんが、未読の方はご注意下さい。) 完全復刻版を買ったのは、勤務先から帰宅する途中でした。以前から探していて、やっと見つけたのです。「完全復刻版」の文字を見つけたときには、胸が高鳴りました。 電車に乗ってすぐ読み始めました。勝手に期待を膨らませすぎてはいけない、と自分にいい聞かせながら、ページをめくっていきました。最初に目についたのは、いかにも昭和40年代という雰囲気の絵柄、不良学生の服装。昔のまんがだなという印象でした。 飛鳥了の登場と語り。作品世界に引き込まれ、アニメとの違和感を感じたのはここからです。アニメとは全然違う作品だということは、たくさんの人から聞いてはいましたが・・・・。こういう背景があったのか、まああれだけ語り継がれている作品だから、このくらいの設定はあっていいよなという印象。といいながらもデビルマン登場時の画にはまず驚き、それから永井豪の画力を見直しました。 シレーヌとの闘い。カイムとシレーヌの関係に、単なる勧善懲悪ものではないという奥深さを垣間見ました。それにこの壮絶さ。久しぶりに読み応えのある戦闘シーンだ。 クモ、ジンメン、ススムくん。げっ・・・・これはマガジンに連載されてたんだよなあ・・・・これ読んだ子供はどうするんだろう。でも、なぜか意図的な残酷さを感じない。起こった出来事をそのまま描いている感じ。あっ、人がたくさん降りたなと思ったら横浜駅か。乗り過ごしそうだからちょっと読むのをやめようかな。でもやっぱり続きが気になるから読み続けよう。 無事目的の駅で降りることはできた。バスを待つ間も読み続ける。作品の世界が広がってきた。飛鳥了が面白い。やっぱりすごい、この作品は。期待通りだ。 寮の部屋に着いた。このまま読み続けたい。しかし、この作品はあと1冊とちょっとで終わってしまう。もっと集中したい。はやる心を抑えて、顔を洗ってスーツから普段着に着替え、ベッドに寝転がって再び読み始める。 「人間狩りだー」やはりそうきたか。人間のダークサイドがここまで描かれている作品はなかなかない。でも相変わらず事実をそのまま描いているような自然さがある。だからこそ恐ろしい。ラスト1巻にはどのような世界が?もう期待の高まりを止められない。 一番の後悔。5巻のカバーの折り返しが目に入ってしまった。中身を読む前に、飛鳥了の正体がわかってしまった・・・・しかしそれでも驚く。折り返しを読んで驚いたのは初めてかもしれない。気を取り直して先に進む。ついに牧村家も標的に。なぜか初めから絶望的な気分。だが結果は・・・・この作品には限界はないのか?牧村家を襲う者達の画も、まともな人間の感性を超えているような凄み。どこまでいくのか、この作品は? ・・・・というふうに読み進めていったのですが、5巻の最終8ページから受けたショックは、以上の印象を吹き飛ばすほどの筆舌に尽くしがたい(と言ってしまっていいと思います)ものでした。 生命は、なぜ存在しているのか。なぜ、生命は生まれたくなくても生まれてきて必死で生きているのか。牧村家を襲ってしまうのは、生命が存続していこうとする結果なのか。だとしたら生きようとすることは倫理を超えた行為なのか・・・・自分の生命がとてつもなく小さく思えるような悠久の時の流れを感じながら、そんな問いが心の中でこだましていきます。答えは見つかるのでしょうか。(1998年9月29日) ◇ 夏目漱石/私の個人主義■ご紹介下さった方みんさん ■紹介メッセージ「薄い小冊子に(特に初期)漱石の社会への主張のエッセンスがつまっている、実にコスト・パフォーマンスの高い(^^;)一冊です。」 ■管理人の感想明治44年〜大正3年に語られた5つの講演をまとめた本。特に印象に残ったのは2編。「道楽と職業」と「私の個人主義」です。 「道楽と職業」では、まず職業について次のように書かれています。職業は多少なりとも「一般社会が本尊」となるものだが、科学者、哲学者、芸術家だけは自己本位でないとやっていけない。特に「己の無い芸術家はせみのぬけがら同然」だと。これは常々個人的に感じていたことでもあったので、非常に共感しました。 そして、漱石は世の中が発展するにつれ、職業が専門的になりすぎ、「お隣のことが皆目わからなくなってしまう」という問題点を指摘しています。これも、現代社会にもそのまま当てはめることができる観点だと思います。 「私の個人主義」では、まず漱石自身の経験が語られています。英文学を専攻した後、「文学は解らずじまい」で、あやふやな態度で教師になったが落ち着かず、イギリスに留学しても「鈍痛」は消えなかった。しかし「文学とはどんなものであるかその概念を根本的に自力で作り上げるより外に、私を救う道はない」と悟ったとき、つまり自己本位に目覚めたとき、「不安は全く消え」たとのことです。この体験をもって「自己は主、他は賓であるという信念」の大切さを説く部分には感銘を受けました。 さらに漱石は、その「自己を主とする個性」を持つには他人の個性を尊重することが必要になってくることも忘れてはいません。 これらの言葉は、現代でもよく語られるものではあります。しかし、漱石自身の経験に根ざしていることと、100年近く前に既に指摘されていることだという点で、凡百のエッセイより私たちに説得力を持ち、力を与えてくれるものではないかと思います。その意味でも、コストパフォーマンスは確かに高いですね。(2002年9月) ◇ 夏目房之介/手塚治虫の冒険■ご紹介下さった方じぞうさん ■紹介メッセージ「手塚治虫が日本のまんが史に残した本当の功績とは何だったのかを読み解いていくための格好のテキストとなる好著。「表現者」としての手塚治虫の革新性から彼の苦悩や焦りまでを、まんが表現上のライバルである白土三平や大友克洋らと比較することで見事に浮き彫りにしている。「手塚治虫=ヒューマニズムの人」という図式に疑問を持つ人にぜひ読んでいただきたい力作である。」 ■管理人の感想手塚治虫についての本は数多くありますが、この本はいくつかの点で個性的かつ興味深いです。 まず第一に、画からのアプローチがメインである点です。豊富な実例を元に、手塚の画から実に多くの興味深い考察を引き出しています。レオの目とのらくろの目を入れ替えてみて、手塚の描く「目」にいかに豊かな表情が盛り込まれているかを示してみたり、逆に、劇画ブーム以降の作品、例えば「きりひと賛歌」の登場人物の表情の乏しさを挙げ、これがリアリズムにつながっている点などを指摘したりしているのです。手塚まんがをただ読んだだけの感想ではない。これは、著者がまんが家だったからこそですね。 第二に、手塚のほぼ全キャリアをまんべんなく網羅していること。私が今までそういう本に接していないだけかもしれませんが、これは新鮮でした。作品を評した本の場合、手塚治虫ほど長く幅広く活躍したまんが家の場合、どうしてもある一時代・ある一方面に偏重したものになりがちです。ところがこの本は、見過ごされがちな80年代も含めしっかりとフォローしています。 第三には、これが最も印象に残った点ですが、手塚を神聖視せず、個人的な好みをある程度述べながらも他のまんが家と公平に比較している点です。それでいて、突き放すような書き方ではなく、手塚作品への愛情もしっかり感じられます。手塚のような巨大な存在に、このような視点を保つことは非常に重要だと思います。ともすれば「礼賛」(あるいは「批判」)にバランスをとられがちな対象ですから。その結果、日本の戦後まんが通史としての読み方も可能な構成になっています。 以上のように、(じぞうさんのおっしゃるとおり)手塚治虫の功績を正確に示している本です。一般的な手塚論に接した後で読むと、その価値がよりよくわかると思います。(2003年1月) |
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